不肖・宮嶋 最後の戦場 ウクライナ戦記

 

戦場カメラマン 宮嶋茂樹さんの「不肖・宮嶋 最後の戦場 ウクライナ戦記」(文芸春秋)を読みました。
『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』宮嶋茂樹 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS (bunshun.jp)
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻後の3月12日から4月17日、宮嶋さんが現地に行き、取材した内容の戦記です。
ロシアの攻撃を受ける首都キーウや周辺の取材に日本のマスコミはほとんど姿を見せなかったそうです。
そんな宮嶋さんの戦場からのレポートでした。
興味のある方は是非、手に取って読んでみてください。
以下、私の印象に残ったところです。





日本とウクライナはロシアに不当に領土を奪われた国同士

ウクライナの人々は親日家が多いそうです。
それは、今この大地を蹂躙する大国ロシアに一度とは言え勝ったことで親近感が芽生えたのかもしれないそうです。
また、日本人とわかると「クリル(北方領土)、クリミア」と声をかけてくることが多かったそうです。
日本とウクライナには不当に領土を侵略し奪ったロシアという共通の敵がいる、との認識であり、「日本はいつ、取り返すんだ」と続く言葉があったそうです。
ウクライナの人たちに、「日本はロシアに不当に領土を奪われた国同士」と思われていることにはっとしました。

終戦直後のどさくさにまぎれ北方領土を奪ったロシア。
しかし、武力で取り返そうという意識は日本人にはないように感じます。
平和的な返還を望んでいますが、ウクライナ侵攻、それも核で脅すロアを見ているととても日本に返還する気はないようです。
国際的に日本はヘタレと思われているのかもしれません。

日本で戦争が起こったら一か月で飢餓列島

ウクライナは世界の穀倉地帯と言われています。
広大な耕作地で小麦などが栽培されています。
戦争当時国でありながら、ウクライナからの穀物輸出が滞ると世界の食糧事情がひっ迫します。
食料自給率が100%以上あるウクライナです。
戦時とは言え、戦場でも食料は豊富にあるようです。
こうした状況を見て、宮嶋さんは
「我が国の食料事情を憂うばかりである。
ウクライナと違い我が国は島国である。
空港は破壊されて使えない。港はあっても概要は敵艦うようよ
食料自給率4割もない日本列島は1ケ月で飢餓列島や。」(p143~p144抜粋)
貿易収支が大幅に黒字だった時代は、自国で農作物を作るより外から買うことが合理的でした。
しかし、貿易収支も赤字が続くなか、食糧の自給率がこれでいいのか、と思います。
更に食料自給率が低いと、外国に攻められた時、たちまち、日本国民は飢餓に陥ることは避けられないでしょう。
戦時中でも穀物を輸出するウクライナを見て、そんなことも考えさせられました。

ウクライナでは女性も戦っている

「男も女も自分が祖国に何ができるか、どう尽くしたら最善かを考えている。
男やろうが、女やろうが銃を扱えればそれを手にし、マネジメントが得意なら武器や生活物資をどう運べばいいかを知恵を絞り、手先が器用なら武器の整備を、料理が得意なら最前線の将兵を思いひたすら包丁を振るえばいいのである。」(p34)

テレビで流される映像で市民が銃を手に取り、祖国を守ろうとする姿を見ます。
また、ゼレンスキー大統領は、首都にとどまり祖国防衛、国土奪還の意欲を見せています。
強い国民だと思います。
「それに翻って、わが国では」というつもりはありません。
ただ、世界ではよその国の領土を奪い取ろうとする国が存在することは忘れてはいけません。


あなたが日本人でよかった。
クリル・アイランズ(北方領土と千島列島)を同じロシアに奪われたあなたたちも一緒に戦いましょう
私たちの行動は小さな一歩だけど、最後には必ず勝つわ。(p34)




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