さらば 東大寺 法華堂
わざわざ法華堂に行くために、奈良まで行くこともありました。
しかし、もう、2度と来ることはないと思います。
「さらば、法華堂。」
そうつぶやき、奈良を後にしました。
旅の目的
旅をする目的は大きく分けて二つあると思います。
一つ目は、初めての地を訪れ、自分の目や耳で感じるための旅です。
「百聞は一見に如かず」の旅です。
一昨年、壱岐・対馬を旅しました。
ネットや書籍で知る壱岐・対馬とは違い、行ってみて初めて分かることが多いことを気づきました。
2つ目は、そこが好きだからまた訪れる旅です。
TDLに年に何度も行く人がいるように、そこが好き、そこで体験することが好き、だからもう一度行きたい、と思い訪れる旅です。
この目的で訪れた回数で一番多いのは奈良東大寺の法華堂です。
法華堂で訪れるようになったきっかけはある女流作家のエッセイ
20年以上前のことだったと思います。
ある女流作家のエッセイで「関西に行くと、奈良まで足を伸ばす。東大寺の法華堂で日光さん、月光(がっこう)さんに会うためである。法華堂の中で静かに両菩薩に対峙する時間が好きだ。」とありました。
日光さんとは日光菩薩、月光さんとは月光菩薩のことです。
これは是非、私も体験してみたい。
そう思い、訪れたことが始まりです。
法華堂は別名3月堂 2月堂のすぐ横にあります
この写真は2月堂です。
奈良のお水取りで有名です。
3月堂の正面写真です。
2月堂のすぐ横に法華堂が立っています。
別名3月堂。
このお堂の中に10体の仏像が立ち並んでいます。
法華堂には靴を脱ぎ、入ります。
堂内はほのかな明るさです。
仏さんに向き合う位置に、腰を掛ける”縁側”があります。
そこに腰を掛け、10体の仏像に静かに向かい合います。
拝観者が入れ替わり入堂してくるのですが、皆無言でした。
静かに入ってきて、物音を立てないよう空いてるところに腰掛け、無言で仏さまに対峙する。
そして、静かにお堂から退出する。
私が行き始めた頃は、その仏像の中に日光さん、月光さんがいらっしゃいました。
何とも穏やかな顔をしていることでしょう。
人々を日光、月光で照らし見守っている。
静謐な空間できれいなお顔の日光さん、月光さんと向かい合う時間が好きでした。
最近の法華堂での拝観はまるで変ってしまいました
ある時、日光さん月光さんにまた会おうと法華堂を訪れると両菩薩がいらっしゃいません。
どうしたことか?と聞くと、「東大寺ミュージアムにお引越しされた」とのことでした。
東大寺ミュージアムが2011年10月に開館するのに合わせ、日光さん、月光さんはミュージアムに収蔵されたそうです。
その足で東大寺ミュージアムに行きました。
近代的な明るいミュージアム内で日光さん、月光さんにお会いしました。
私は法華堂でお会いする両菩薩の方が好きでした。
その後も「日光さん、月光さんがいらっしゃらなくても」と思い、法華堂に行くことがありました。
しかし、最近の法華堂の中は私語が多く聞かれます。
今回も、男性二人連れが「写真を撮りたいけど、いかんよな。あの柱に触ってみたい。でも、崩れたら億の賠償を求められるかもしれん。」更には、「北大の創設にかかわったクラーク博士は、実際には6ケ月くらいしかいなかったらしい。」とか法華堂に関係のないクラーク博士の話を止めません。
更に、背後の受付・入堂券を販売する職員の会話までお堂に聞こえてきます。
いたたまれず5分も待たずにお堂を出ました。
ここ3回、こうした経験をして、そのたびに「もう法華堂にはこない」と思います。
それでも、「たまたま、マナーの悪い人と一緒になったんだろう」と思い直し、再訪してはまた嫌な思いをすることの繰り返しです。
たった20年の時の流れです。
それなのにお堂の中で「静かに仏さまに向き合う」ことができない人が増えたように思います。
奈良の東大寺は観光名所です。
この日も家族連れ、修学旅行生がたくさん来ていました。
もうすぐインバウンドの外国人観光客もたくさん来ることでしょう。
大勢の観光客が来ていても、法華堂に行けば静かに仏んさんに向き合うことができる。
そう思えばこそ、足を運んでしました。
しかし、その体験ができないのであれば、もう、奈良には来ることはないでしょう。
法華堂での貴重な体験ができたことをいい思い出にしたいと思います。
コメント
日光さん・月光さんも10年以上経過した今もきっと淋しく残念に思っていることと思います。
また、両菩薩様の環境をお守りする職員がそうのような姿勢では来場者のマナー改善も見込めませんしミュージアムの繫栄も望めないのではないでしょうか。
長年静かに見守って下さっている両菩薩様に失礼ですね。
きっと穏やかな両菩薩様も法華堂におられた頃より険しいお顔になっているのではないでしょうか。
両菩薩様が気の毒に感じてしまいました。
西村さん コメントを頂き、どうもありがとうございます。
早速ですが、両菩薩さまが東大寺ミュージアムに移られたのは地震対策だと思います。
両菩薩像は塑像です。一方、現在も法華堂にいらっしゃる仏様は木彫です。
どちらも地震で倒れると被害が出ますが、塑像の方が取り返しのつかない被害を被りそうです。
そのため、耐震対策の優れるミュージアムに移られたものと思います。
堂内での私語、係員の会話についてつい、感情的なブログとなりました。
時代の流れなのかもしれません。
私はある期間でもいい体験をすることができたと感謝しています。
これからも拙いブログですが、よろしくお願いいたします。