須留田八幡宮神祭と土佐絵金祭り

 

隣町の赤岡町。
商店街の軒先に日没後、蝋燭を灯し絵金さんの屏風絵を楽しむお祭りが夏の風物詩となっています。
土佐絵金祭りが有名です。
実はもう一つ須留田八幡宮の神祭でも同じように屏風絵を楽しむことができます。
今回、初めて両方の祭りに行ってきました。
更に絵金歌舞伎も楽しむことができました。


須留田八幡宮神祭 

須留田八幡宮神祭 - 絵金蔵 公式ホームページ (ekingura.com)

藤原緋沙子さんの「絵師金蔵 赤色浄土」には、須留田八幡宮に奉納する歌舞伎の芝居絵を描くために絵金さんが赤岡に招かれ長期に滞在し、沢山の屏風絵を仕上げたと書かれています。
「絵師金蔵 赤色浄土」を読みました (taichanretiredlife.blogspot.com)

須留田八幡宮は赤岡町の北の方にある八幡宮です。
毎年7月14日と15日がお神祭です。
この神祭に合わせ氏子が持っている絵金さんの屏風絵を軒先に飾ります。
私は、絵金祭りに入ったことがありますが、「絵師金蔵 赤色浄土」を読むまでは須留田八幡宮の神祭も、いやいや須留田八幡宮さえも知りませんでした。


藤原さんの本でその存在を知ることができました。
早速、今年の神祭に行ってみました。



須留田八幡宮の参道には幟が立ち、神祭が行われていることが分かります。
参道の両側に提灯が下がり、祭りの雰囲気を醸し出しています。

この長く続く参道からもこの須留田八幡宮が力のあるお宮だということが分かります。
400年ほど前、赤岡の周辺には塩田がありました。塩のない大栃などへの塩の道の起点であり、交易で栄えていました。
須留田八幡宮の参道に立ち、その歴史を思い出しました。



参道はまだ奥へと続きます。
鳥居が見えてきました。
奥にお宮が見えます。
立派なお宮です。
氏子が集まっています。
宮司さんの祝詞も聞こえてきます。
境内には絵金さんの芝居絵が飾られています。





ただここにあるのはレプリカです。
やはり本物と比べると人物の輪郭、色の鮮やかさが違います。

神祭に来た人の「なんちゃないやいか」の声を聞き、レプリカを展示するようになったとのことでした。



車で商店街に移動しました。

陽も落ちた商店街に人出は多くありません。
提灯が軒先にぶら下がっていないと今日が神祭であることを忘れてしまいそうです。
神祭と言っても夜店も出ていません。
静かなお祭りです。
軒先に絵金さんの芝居絵が展示されています。
町の人が芝居絵がどうした物語なのか、どの場面なのか、登場人物は誰なのかなど説明してくれます。
蝋燭の明かりで見る芝居絵は昼間見る芝居絵とはまた違った雰囲気があります。
蝋燭の明かりに照らし出された絵金さんの芝居絵はまたひときわ鮮やかです。

人出も少なく絵金さんの屏風絵をじっくりゆっくり見ることができました。






土佐絵金祭り

土佐赤岡絵金祭り 公式ウェブサイト (ekinmatsuri.com)

土佐絵金祭りは毎年7月の第3土日で開催されます。
今年(2023年)の第3土日は15日と16日でした。
須留田八幡宮の神祭が7月14日と15日ですので、今年は15日が重なり、14,15,16日とつながっていました。

7月15日に絵金祭りに行きました。
今日はビアガーデンもあるし、地元の高木酒造の振る舞い酒もあるので、ごめんなはり線で行きました。






赤岡でほとんどの乗客が降りてしまいました。
乗客のほとんどは絵金祭りに行く人たちでした。
コロナで3年も絵金祭りは自粛でした。
ごめんなはり線も今日ばかりは書き入れ時です。
ビアガーデンの準備に余念がありません。
赤岡商店街の骨とう品やさん。
県外からの取材も入っています。




 



陽も落ち、提灯が灯り、蝋燭の明かりが絵金さんの屏風絵を照らし始めると大勢の人が集まってきます。

昨日の須留田八幡宮の神祭とは全く違います。
絵金祭りが”動の祭り”、須留田八幡宮の神祭が”静の祭り”と言われるゆえんです。


今年は須留田八幡宮の神祭に行くこととは別にもう一つ楽しみがありました。
それが土佐絵金歌舞伎です。
大勢の人出賑わう絵金祭りの日に、弁天座で地元の有志による歌舞伎が上演されます。
ワクワクしながら出かけました。

赤岡町にある弁天座です。
常設の劇場ではありません。
上方から落語家を読んでの落語会や、東京から歌舞伎を呼ぶこともあります。
そうだ笑福亭鶴瓶さんも、市川海老蔵さんも出演したこともあります。
昨年末は片岡千恵蔵さんたちスターが勢ぞろいする映画「赤穂浪士」を上演もしました。
今日は絵金歌舞伎です。
入場料は無料です。
パンフレットを作成する費用にと一人500円の寄付をお願いされます。

17時開演だというのに16時半頃には半分以上が埋まっていました。
知る人は知っているんですね。

舞台の上には「弁天座」の看板がかかっています。
一幕目は「浄瑠璃式三番叟」です。
天下泰平、五穀豊穣、芝居繫盛を祈願するものです。

白い衣装の中ノ太夫は地元の中学2年生、その隣の面持ちは小学6年生が演じています。
私の知り合いの娘さんも面持ちで出演したことがあるそうです。
黒木慰と千歳による動きのある、そしてユーモラスな演出に笑いや拍手が起こりました。







幕間に一度、外へ出ました。
地元の高木酒造が振る舞い酒をしています。
白い紙コップで供されるのが振る舞い酒です。
枡は300円です。
一度枡を買えばお代わり自由です。
もちろん枡を買いました。
道端で座り込んでいるカップル。二人とも豊の梅の枡を持っています。女の子が少しろれつが怪しい口調で「もう4杯も飲んだよ。5杯目行く?」と言っているのが耳に届きました。お嬢さん、自分を大切にね。


弁天座の升席で、枡酒を頂きながら、芝居を見る。
なんとも楽しいではありませんか。

ただおつまみが少し寂しい。
次回からはおつまみは持参するようにしましょう。



二幕目は子供たちによる「白浪五人男~稲瀬川勢ぞろいの場~」でした。

花道に登場し、可愛い見栄を切ります。

可愛い声で「小さい頃から手癖が悪く」などと言うものですから、何ともほほえましい盗賊です。
5人が勢ぞろいしました。
追手たちも登場し、捕り物が始まります。
盗人たちの五人男が追手を抑えます。

可愛い盗人と追手のやり取りと盗人役の子供たちの見栄を堪能しました。

幕が下り始めると観客席から沢山のおひねりが舞台に投げ込まれました。

いやぁ、良かったですね。

3幕目は「傾城阿波の鳴門 ~どんどろ大師の場~」でした。

地元のおんちゃんが扮した尼が花道から登場します。
4度目の披露だそうです。

アドリブでの尼たちの掛け合いも見どころだそうです。
物語とは全く関係のない尼たちの掛け合いが始まりました。
この日は弁当の話でした。

高知県出身の植物学者牧野博士をモデルにした朝の連続テレビ小説「らんまん」。

絵金歌舞伎にも万太郎と竹雄が登場しました。
牛鍋を食べすぎて太りすぎた万太郎でした。
生き別れになった母と娘が対面します。
でも、名乗ることができません。
思いを引きずりながらまた別の道を歩まなけれんばなりません。
その切ない風情を見事に演じた子供の役者に大きな拍手が起こりました。
舞台が終わるとこの日の出演者が舞台であいさつ。

地元の有志だけでなく、外国語指導の雨時家人、夏休みに研修できている大阪外語大学の女学生なども出演していました。

大きな拍手に包まれ、名残惜しい舞台も終わりました。

歌舞伎の後、町を歩くと蠟燭の明かりに照らされた絵金さんの芝居絵。

いやぁ、夏の祭りとしてなんといいんでしょう。
地元にこうした祭りがあることに感謝です。





今年初めて須留田八幡宮の神祭、絵金歌舞伎を経験しました。
地元にいてこんな楽しいことを今まで知らなかったことが悔やまれます。
こんなことを知ることができるのもリタイヤして余裕ができたからだと思います。
来年からは須留田八幡宮の神祭で絵金さんの屏風絵を見て、
絵金祭りでは絵金歌舞伎を見るようにしましょう。

ちなみに来年(2024年)の須留田八幡宮の神祭は7月14日(日)、15日(月・海の日)。
絵金祭りは7月20日(土)、21日(日)です。







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