宮沢賢治の生涯はちょっと悲しい

 

「銀河鉄道の父」(門井慶喜著、講談社)を読みました。

「銀河鉄道の父」とは、宮沢賢治の父・政次郎のことです。
政次郎の視点から描いた賢治とその姉妹兄弟を中心とした家族の物語です。

今まで抱いていた宮沢賢治のイメージとはずいぶんと違っていました。
ちょっと悲しい物語でした。




第158回(2017年下期)直木賞受賞作「銀河鉄道の父」

私がこの本を手に取った理由は次の二つです。
(1)シネコンの予告で見て興味を持った。
    本作を映画化したその名も「銀河鉄道の父」がGWに全国で公開されます。
 先日、「Dr.コトー診療所」を観に行った際の予告動画が流れていました。
    宮沢賢治は好きな作家さんです。
    どんな子供だったんだろう、どんな経緯で童話を書くようになったんだろう?と興味を持ちました。
(2)著者が先日読んだ板垣退助を描いた「自由は死せず」と同じ門井慶喜さんだった。
 門井さんの文章は私が波長が合うようですらすらと読むことができます。
 門井さんの作品を読んで行こうと思っていたので、いいタイミングでした。
読了後、ググって見ると直木賞受賞作でした。
文庫版の出版にあわせてインタビューもアップされています。

あらすじ

上の特設サイトに次のあらすじが紹介されています。
「政次郎の長男・賢治は、適当な理由をつけては金の無心をするような困った息子。
政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、賢治のためなら、とつい甘やかしてしまう。
やがて妹の病気を機に、賢治は筆を執るも――。
天才・宮沢賢治の生涯を父の視線を通して活写する、究極の親子愛を描いた傑作。」
<第158回直木賞受賞作>

今まで抱いていた宮沢賢治とは違った賢治

「雨にも負けず」の詩にあるような生真面目な少年。
賢治に対し漠然とそのようなイメージを抱いていました。
しかし、賢治少年は悪ガキたちと河原で遊び、いたずらをします。
宮沢家は質屋で裕福な生活をしています。
政次郎は、当時の父・家長として求められる威厳と賢治に対する愛情の間で葛藤しながら、賢治に対する愛情に抗し切れません。
「質屋に勉強は要らん」と言われながら、賢治は中学校に上がり、寮生活を始めました。
更に農学校に行くようになります。
あらすじにあるようにいろいろな理由をつけて金の無心をします。
また、質屋を継ぐことが嫌で、いろいろな仕事を思いつくのですが、どれも裏付けのないもの。
私の抱いていた賢治のイメージからかけ離れた姿です。

石ころが好きで、物語を作ることが好き

宮沢賢治の童話とつながるエピソードとしては石ころが好きで収集していたことや、物語を作り妹たちに語って聞かせていたことでしょうか。
でも、そのまま素直に、順調に作家の道に進んだわけではありません。

最愛の妹との別れが転機

最愛の妹が病死します。
これを機会に創作、出版に進みます。
しかし、その後も順風満帆とはいきません。

詩や童話が評価されたのは賢治の死後

自費で出版した詩集、童話集も鳴かず飛ばずです。
そして妹と同じ病で臥せり、政次郎の願いもむなしく最期を迎えます。
賢治の死後、中央で詩や童話が評価されるようになります。

私が抱いていた賢治のイメージとは全く異なる賢治がいました。
そしてちょっと悲しい賢治でした。

GWに映画が封切になります。
でも、観に行くことを躊躇します。
それよりも賢治が育った花巻に行ってみたいと思います。
通り過ぎるのではなく、数日滞在し、賢治に関わるいろいろな資料館に行ってみたいですね。

あ、その前に、宮沢賢治の童話を読み返ることとしましょう。
童話を執筆した背景を思いながら、「銀河鉄道の夜」、「注文の多い料理店」、「風の又三郎」、「ドングリと山猫」などの童話を読むと、今までとはまた異なる世界を感じることができると思います。
きっとジョバンニやカンパネルラも違った目で見ることでしょう。

本書の最後に「雨ニモマケズ」の詩の全文が載っていました。
読みながら、涙が止まりませんでした。


「ソウイフモノニ
ワタシハナリタイ」






コメント

このブログの人気の投稿

野市に”とばし”が戻ってきました

谷中から不忍の池までぶらり散歩

トラとハナ(5) 秋風と共に寂しくなってしまいました