あの三体の外伝 三体X を読みました

 

10月17日からの3連休は台風14号の影響で家に籠って本を読んでいました。
その中の1冊に「三体X」があります。
著者は宝樹。
えっ!
劉慈欣じゃないの?
そうなんです。
三体ファンが書いた外伝(スピンオフ)なんです。




中国のSF三体三部作

本家の「三体」は中国の劉慈欣さんの作品です。
2015年、ヒューゴー賞を受賞しました。
アジア人作家の作品では初めての受賞です。
日本のSF作家も受賞していない賞です。
「三体」、「三体Ⅱ暗黒森林」、「三体Ⅲ死神永生」とあり、三体3部作と呼ばれています。
最初に「三体」を読んだとき、発想のユニークさに加えスケールの大きさにさすが大陸の作家!と度肝を抜かれました。
Ⅱ、Ⅲと出るたびに喜び勇んで読んだものです。

三体X! 

書店をぶらぶらと歩いてるとき、書棚に「三体X」を見つけて、びっくりしました。
「X」って、いつの間に10までいったの?
更に著者を見ると宝樹!
え、劉慈欣じゃないの?
本の帯を見ると、三体のファンが書いた外伝(スピンオフ)とありました。
「X」は10ではなく、不確定という意味だそうです。
外伝(スピンオフ)でも、本家の劉慈欣さんがこの作品の出版を許可した作品です。
「『三体』に隠されていた驚愕の真相とは」とあり、さっそく読みました。

スピンオフ三体X

ネタばれになってはいけませんので、私の印象に残っていることを少しだけ書きます。

1.ビッグバンと次元

三体3部作は物理の「くすぐり」が織り込まれています。
三体Xは、その「くすぐり」に悪乗りしたくて筆が進んだのでは?と思いました。
私たちが住む空間は3次元です。
超ひも理論では、10次元といいます。
量子論の標準理論ではクリアできない問題を解決できそうな理論が超ひも理論です。
全宇宙のすべての素粒子・物質はひもでできているというものです。
その理論は、この世界は10次元であると予言します。
実際の世界の3次元より上の次元は微小な空間に折りたたまれているのだそうです。
多分、正確ではありません。
素人の理解です。
10次元と3次元の関係を、三体3部作のくすぐりを引きずり出してこれでもか、と展開していきます。
時間についても次元の数に絡めて、ビッグバンにまで結び付けていきます。
対称性の破れについても、絡めています。
あらあらエントロピーにまで・・・
なるほど、こんなストーリーで10次元と3次元を結びつけるのか!と印象に残っています。

2.日本の影響

人間の姿の「智子」は、名前もそうですが、外観、振る舞いが日本の女性です。
時にはしとやかで恥じらいがあり、時には情熱的で、奔放な、とても魅力的な女性として日本のAV女優武藤蘭が登場します。
田中芳樹の「銀河英雄伝説」から「伝説が終わり、歴史が始まる」を引用しています。
日本の影響は劉慈欣さんの三体三部作でも感じました。
三体Ⅱ暗黒森林で太陽系内で地球軍が三体世界の水滴と闘います。
地球軍の規模、損害が「銀河英雄伝説」にでてくるエピソードを想起させます。
劉慈欣さんの「智子」も日本の女性をモデルにしていますね。

3.ちょっと話を広げすぎ?

全宇宙を舞台に話が広がっていきます。
もうそうなると光速の制限など気にしてはいられません。
舞台のスケールが全宇宙ではなく、全地球レベルの感覚で物語が進みます。
仕方なく時間だけはやたら長いスケールで帳尻を合わせているように感じました。

タイトルに同じ「三体」の名前が入った外伝です。
劉慈欣さんとはまた違った「三体」でした。
これもまた、興味深く読むことができました。

中国のSFのレベルの高さ、すそ野の広さを感じる作品でした。





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