田崎史郎さんの講演を聞きました
衆議院選挙の投開票が27日です。
取材をしたくてきっとやきもきしながら高知のいなかの街にやってきたことと思います。
どんな話が聞けるか楽しみに出かけました。
田﨑史郎 - Wikipedia
田崎さんは福井県で1950年に生まれ当年とって74才。
中央大学を卒業し、時事通信社にはいりました。
政治記者として44年のキャリアを誇ります。
毎日のようにテレビに出演し顔を売り、講演会に呼ばれることも多いそうです。
事実を伝える
74才になってもメディアから声がかかる理由は田崎さんのスタンスだと考えているそうです。
決して「批判家」「批評家」ではありません。
「事実を伝え」「判断材料を提供する」。それを聞いた皆さんに判断してもらう。
事実を伝えるためには取材をしなければなりません。
そのためには時の総理大臣と話をすることができる関係が大切です。
民主党の野田さんをはじめ、安倍さん、菅さん、岸田さんとは気軽に話をできる関係を築いてきました。
石破さんとは10年前までは仲が良かったが、石破さんと安倍さんの間に亀裂が入って以降、疎遠になっていた。
その石破さんが総理になって正直困った。
二人の共通する友人が仲を取り持ってくれて「この間のことは水に流そう」となり、これからは石破さんとも話ができるようになった。
田崎さんはどうやって人脈を築いてきたか
1.不遇なときにも付き合う
失敗して「あの人は終わったな」と周りが思うときに付き合う。
第一次安倍内閣で安倍さんは健康不安のためだったが、政権を投げ出したと言われても仕方ない辞め方をした。
周りは「もう安倍は終わった」と言った。
そんなときに安倍さんの側近から田崎さんに「一度、安倍と会ってくれないか」と話があった。
田崎さんは政治家を見るとき情報を切り口に評価する。
この人はどんな情報(量、質)を持っているのか。
その情報をもとにどう判断しているか。
安倍さんと30分1対1で会談をし、「この人は大したものだ」と思った。
そこで「記者仲間を5,6人集めるので3ケ月に一度、飯でも食いながら話をしませんか」と申し入れ、安倍さんとつながりができた。
第2次安倍内閣ができてからも半年に1回程度の会食と2,3日に一度の電話と続けた。
どん底に落ちた見える風景がある。
すぐにいなくなる人。残ってくれた人。新しく来てくれた人。
ほとんどの記者が離れていく中、田崎は寄ってきてくれた。
こうして安倍さんの信頼を得た。
2.築いた関係をどう維持していくか
優れた政治家には多くの人が会いに行く。
こちらが遠慮していると、相対的に「あいつは来なくなった」となる。
お互いに親しい関係だと分かっていても、意識して会いに行く、電話を掛ける。
そうした日々のつながりが長い間の信頼関係を維持していく。
44年の記者人生でこの政治家はすごいと思ったのは田中角栄と安倍晋三
10万人に名前を書いてもらって(選挙を勝ち上がって)政治家にやっとなれる。
頭を下げ、握手をし、どぶ板を這いずり回って名前を書いてもらう。
大変な苦労をした分、プライドも高い。
そんな苦労をしたプライドの高い政治家を動かすことができないとトップにはなれない。
頭を下げ、握手をし、どぶ板を這いずり回って名前を書いてもらう。
大変な苦労をした分、プライドも高い。
そんな苦労をしたプライドの高い政治家を動かすことができないとトップにはなれない。
田中角栄は人の欲望を見抜く天才
会いに来た政治家が金を欲しがっているのか、ポストを欲しがっているのか。
官僚ならポストか、政策推進の口利きかなど相手の欲を見抜く。
見抜いたらその欲望を満たしてやる。
例えばお金。
金が欲しい政治家には、帰りがけに紙袋を渡し「次はいつ来るんだ」と声を掛ける。
紙袋には1、000万円が入っている。
次も来ればまた1,000万円を渡す。
もう角栄から離れなくなる。
こうしたやり方に宮澤喜一は「角さんは政界の金を一桁上げた」と評した。
安倍晋三は人を動かす術を知っていた
田中角栄の時代と違い今は政界に金がない。
自民党は盆暮れ(8月と12月)、所属議員に100万円ずつ配る。
ある時に総裁が「これは私から」と50万円を上乗せしたことがある。
その50万円がありがたれるほど今の政界はお金の桁が下がっている。
では、どうやって人を動かすのか。
それはここぞの時に貸しのある人を動かす。
3年前の総裁選では、安倍さんは高市さんを推していた。
コロナ禍で電話しかない。
安倍さんは一日に100人、貸しのある人に電話をした。
この時は4人が立候補しており、誰しもその4人から電話がかかってくる。
同じ自民党であり、政策にそんなに大きな差はない。
無記名投票で名前を書く際には「借りのある人の頼み」がものをいう。
またその貸し借りをごり押ししない。
安倍さんは「あなたには今まで一度も頼みごとをしていないですよね。今回だけは高市をお願いしたい。」のように電話をする。
そうすると電話を受けた方は、安倍さんからの借り(例えば、副大臣にしてくれたこと)を思い出す。
それを「あなたには貸しがありますよね。」と言ったら言われた方が嫌な気分になる。
嫌な気分のまま無記名投票に向かうと「誰が言われたとおりにするか」となる。
総裁選は「貸し借りを清算する場」ともいえる。
貸し借りで自民党の総裁、ひいては日本の首相が決まると聞くと眉をひそめる向きもあるだろう。
しかし、社会や会社、地元などがどうやって動いているかを考えると、人間関係が重要であり、それは貸し借り、信頼関係が元になっている。
安倍さんは周りの人との関係を築くために気を付けていたことを思い出す。
一つは「無駄な時間を一緒に過ごす」こと。
二つ目は「相談する」 相談すると意気に感じ、相手が一所懸命やってくれる。
安倍さんを支えようとする人がどんどん増えていった。
今の政界で貸しを持っているのは麻生、菅、岸田。
先の総裁選でなぜ高市が負けたか
1回目の投票では高市がトップだった。
しかし、国会議員票がものをいう2回目の投票では石破が逆転した。
今の自民党は強硬保守と穏健保守が大きく割れている。
両者を分けるのは靖国参拝。
強硬保守は「我が国のために命をささげた御霊に参拝するのは当然であり、他の国にとやかく言われることではない」。
穏健保守は「日本のために命をささげた御霊を日本人は忘れてはならないことだが、周りの国との折り合いも大切」。
日本のために命をささげてくれた御霊のことを忘れてはいけない。
しかし、総理大臣が靖国神社を参拝すると国際的な摩擦を起こす。
安倍総理が靖国神社に参拝した時には真っ先にホワイトハウスが遺憾の意を表明した。
私たちが英霊と考えている人たちだが、周りの国から見るとその”英霊”が侵略してきた。
福島原発の処理水に対して無茶苦茶な理屈をつけて難癖付ける国がある。
そんな国とも付き合っていかなければならない。
1回目の投票では国会票が46だった石破さんは2回目には186票と140票も上積みした。
小泉や岸田などの票を足しても40票が足らない。
外交関係を重視し、外国とも折り合いをつけてやっていこうとする穏健保守の人たちが「高市では危ない」と石破に投票した結果だと考える。
政治家いろいろ
高市早苗
いざとなったら連絡が付かなくなる。
3年前の総裁選後、安倍さんが電話しても出なくなった。
全部、自分で背負い込む。
政調会長になっても副会長と話し合わない。
小泉進次郎
皆さんが思っているほど頭は悪くない。
周りの意見を聞こうとする姿勢がいい。
田崎の推し。
茂木俊充
先の総裁選候補9名の中で林と共にずば抜けて頭がいい。
フォトジェニック・メモリと言われ見たものを画像として記憶する。
文章を構成したものを見ても読まない。
画像としてどこを書き換えたか理解する。
複雑なTPPと取りまとめたことからも頭の良さが分かる。
ただ、頭のいい人間の常として自分よりできない人間を馬鹿にする。
国会議員だけでなく官僚も分け隔てなく𠮟り、馬鹿にする。
叱られた人間は「すみません」と言いながら「いつか見ていろ」と腹に一物もつ。
先の総裁選で茂木陣営は「国会議員票は70票はある」と言っていたが、開けてみれば34票。
「茂木さんに投票しますよ」と言っていた議員の半数は茂木に入れなかった。
そのくらい人望がない。
林芳正
茂木俊充と同じくらい頭がいい。
英語も堪能。
外交も通訳なしでこなす。
次の衆議院選挙がよほど選挙の顔を要するような選挙でない限り、次は林芳正が総裁になるだろう。
石破茂
理想主義者で現実を見ない。
取り巻きが飲み食いを献立たが、「飲み食いで仲間を増やすのか?政策が一致して仲間になるのでは」と飲み会に不参加。
正しことだが、「正しいことを言うのではなく、正しいことをやるのが政治家だ。」
総理になって変った。
岸田文雄
相談しない。
安倍さんを支えようとする人が増えていったのとは逆に、岸田の周りからどんどん人がいなくなった。
相談せずに自分で決める。
閣僚人事も麻生にも茂木にも相談しなかった。
田崎さんが「相談したらどうですか。相談された方が嬉しいもんですよ。」とアドバイスしたが「相談したら漏れる」という。「漏れてもいいじゃないですか。いずれもれるものですよ。」と言ったが最後まで相談せずに自分で決めた。
派閥解消も、裏金問題での政倫審出席も自分で決めた。
勝ったものには従う自民党
石破内閣で女房役の官房長官を務める林芳正さん。
かつては「石破だけはいかん」と言っていました。
その石破さんの内閣で官房長官を務めることを聞いてみると「石破さんは勝った。勝ったものには従う。」の返事。
これは林さんだけでなく自民党の習性のようなものです。
選挙で勝った議員。
総裁選で勝った総理。
それまでのことはなかったように勝ったものには従う。
長く政権与党であり続ける一つの理由なのかもしれません。
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