野町和嘉写真展とトークショー
高知県立美術館で開催中の野町和嘉写真展を観て、撮影者本人のトークショーに参加しました。
写真家人生50年で撮りためた写真の数々。
その写真を撮った時の状況や思いを聞くことができました。
野町和嘉さん
野町和嘉さんは高知県三原村の生まれ(1946年10月)のカメラマンです。
いままで数々の写真集を出し、多くの表彰も受けています。
高知県の偉大な先輩です。
今夏、高知県立美術館で写真展を開催しています。
50年の間に撮りためた作品の中から3つのテーマで215作品を展示しています。
第1部 「地平線の彼方から」(作品点数 85点)
第2部 「シベリア収用所1992」(作品点数 45点)
第3部 「世界遺産を撮る」(作品点数 85点)
定員が300名とのことでした。
会場はほぼ満席でした。
野町和嘉さんも後期高齢者の仲間入りです。
そういうわけではないでしょうが参加者の平均年齢は相当高かったようです。
会場ロビーで流していた動画です。
今回のトークショーで紹介していた作品の紹介もあります。
写真展とトークショーに参加して抱いた思い、感想を少し書いてみます。
ブログに使った写真は高知県立美術館のHPからお借りしています。
第1部 「地平線の彼方から」(作品点数 85点)
その後、過酷な風土を生き抜く人々の営みと信仰をテーマとして中近東、アジア、南米など世界各国を訪ね撮影を続けてきました。
その結果、雄大な自然、厳かな聖地、多彩な遺跡や建造物など人類と地球の歩みにとってかけがいのない「遺産」を記録することになりました。
(野町和嘉写真展 パンフレット)
砂漠など過酷な風土で生き抜く人々の厳しい表情を写し取った作品は、その場にいるように感じました。
四季を持つ日本の豊かな自然の中の穏やかな表情の日本人との違いを強く感じます。
今は不毛の地となっている地帯も過去には豊かな緑が広がっていたのです。
その緑がもたらす富で年が築かれていました。
しかし、その豊かな緑も、文明も続きませんでした。
作品を見ていると改めてそのことに気付かされました。
地球温暖化、いや、沸騰化と言われる猛暑、異常気象。
いつまでも今の環境が続くのか。
厳しい気候風土の写真を見て、これからの地球の姿を想像し、夏さというのに寒気を感じました。
第2部 「シベリア収用所1992」(作品点数 45点)
一連の作品は、ソビエト連邦崩壊直後という一大過渡期に、それまで”鉄のカーテン”に仕切られ、西側諸国から窺い知れなかったロシア社会の暗部とそこにうごめく人間模様に肉薄したシリーズで、この度のロシアによるウクライナ侵略という理不尽かつ凄惨な現実に触発されたものです。(パンフレット)
トークショーでロシアのノーベル文学書受賞者のソルジェニーツィン氏の次の言葉を紹介してくれました。
「過去、奴隷国家というものは奴隷の取得にいくばくかの対価を支払ってきた。
数百万人の奴隷を対価なしに徴用できるようになったのは社会主義国家ができてからだ。」
殺人などの重罪者だけでなく数千円のものを盗んだだけで3年を超えて多くの人々が収用されていました。
女性は縫製、男性は住宅や工場建設に駆り出されました。
まさに対価を払わずに奴隷を集めていました。
思い出すのは戦後のシベリア抑留です。
ロシア国内の収用所の事実を知れば、シベリア抑留がロシアにとって決して特別なことではなかったのでしょう。
ロシアがウクライナに侵攻して、160万人ともいわれる人たちがウクライナからロシアに連れ去られています。
シベリア収用所はこのいまも続いていることをこの写真たちは私たちに伝えています。
第3部 「世界遺産を撮る」(作品点数 85点)
自然の造形だけでなく人の手で作り出された美を美しい写真で切り取っています。
アイスランドの海岸で引き潮にも流されずに残っているクリスタルのような氷の輝きは現実のものとは思えない質感でした。
是非、会場でご覧ください。
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