「沈黙の艦隊」と大沢たかおという役者

 

「沈黙の艦隊」を観てきました。

9月29日(金)に上映が始まりました。週末は混雑するだろうと週明けの月曜日(10月2日)に行きました。
平日の昼過ぎの時間帯です。
ガラガラだろうと思っていましたが、年配の、それも夫婦連れの姿が多く、半分ほどの入りでした。

主人公の海江田館長を演じた大沢たかおさん。
存在感のある演技でした。




沈黙の艦隊


もうずいぶんと昔に劇画で登場し、今回、映画化されました。
ストーリーは皆さん、ご存知のことと思います。
日本初の原子力潜水艦が核兵器を搭載したまま統制を離れ、独立国家「ヤマト」を宣言します。
自衛隊が捕獲を、米海軍が沈める作戦を展開します。
戦闘シーンの迫力も見所です。
さらに、核兵器を持った者同士が武器使用を躊躇する状況を描き出した構想は劇が登場時と同じように今も通用する問題提起だと感じました。

大沢たかお

ここ数か月で大沢たかおさんが演じる映画を続けて見ました。
一つは「キングダム運命の炎」です。
大沢さんは王騎将軍の役でした。
この役作りのために20㎏の増量をしたことでも話題になりました。
劇中での王騎将軍は存在感がある!につきます。
能弁ではないし、アクションシーンがあるわけでもありません。
静かに話すセリフと存在感でひときわ目立つ登場人物でした。

そして今回の「沈黙の艦隊」での海江田艦長。
海江田艦長もアクションがあるわけでも、能弁でもありません。
逆に艦長が指揮する場所から動くことなく静の役です。
セリフも感情的なものはなく、静かに、確信をもった言葉でした。

文芸春秋で有働由美子さんと大沢たかおさんの対談

たまたま手に取った文芸春秋2023年10月号でお二人の対談を目にしました。

大沢さんの映画作りにかける思いや、「キングダム」や「沈黙の艦隊」での興味深いエピソードが紹介されていました。

そのなかからいくつか紹介します。









1.僕たち”感動産業”の役目は、人が喜んだり楽しんだりすることをプロとして徹底的に追及することのはず。日本の実写作品の多くは合格点を低く設定しすぎている。

2.サブスクなどの発達で世界中の映画やドラマが手軽に触れられるようになりました。お客さんの価値観が世界基準になっていくことで、これまでのような誤魔化しが利かなくなってきた。

3.「キングダム」では、カリスマ性あふれる王騎将軍を演じるために肉体改造をして20㎏の体重を増やしたことが大変な話題になりました。
→誰にもやれとは言われていない。
自分自身が合格点をあげて、お客さんが想像しないような姿でスクリーンに出たら驚いてもらえるかなと思ってやった。
最近、初めて監督と二人で対談したら、体を作らないイメージだったらしい。体のサイズの問題ではないと思っていたとのこと。今回でパート3なのに今言うか。

4.今回の「沈黙の艦隊」はロシアのウクライナ侵攻が起きて、台湾有事も懸念される中なのですごくタイムリーに感じられた。
→企画段階ではウクライナ侵攻は起きてなかった。
日米安保の問題は長年、皆が見て見ぬふりをしてきた。この先、蓋をしていられない時が来るだろうという思いがあった。その思いで作り出したら、奇しくもウクライナ侵攻のタイミングが重なった。

5.「沈黙の艦隊」の企画段階で防衛相に協力のお願いをした。当時の岸信夫防衛大臣が興味を持ってくれた。安倍晋三さんも前向きにとらえてくれたそうで、協力しましょうと言ってくれた。ありがたいことに実物の潜水艦で撮影したのは邦画では初めてだった。

6.仕事は楽しいですか?
→楽しくないですよ。続けられるのは仕事だから。そこには僕の楽しみは要らない。

7.経験には善し悪しがある。自分の色に染める癖が出て来て、観ている人を飽きさせてしまう。次に何をやっても失敗すると感じて、一回止めなければいけない。

8.僕(大沢)が1990年代にドラマ「劇的紀行 深夜特急」(テレビ朝日系)で世界中を飛び回った時、どの空港にも日本のブランドの看板があった。でも、徐々にアジアの別の国の看板に変わっていって、今、日本のブランドの看板はほとんど見かけなくなった。経済的にも文化的にも日本の地位が低くなっているという問題意識が積み重なって作品作りにつながった。

私たちは映画館に足を運べば、いつでもたくさんの映画がかかっていて、気軽に楽しむことができます。
その背景にはプロデューサーや役者、監督など映画作りに携わる人たちの熱い思いがあることを改めて感じられました。

映画は楽しいですね。
ストーリーだけでなく、役者さんがどんな役作りをしているのかという視線もまた楽しいものです。
11月3日には「ゴジラー1.0」が公開になります。
映画『ゴジラ-1.0』公式サイト (toho.co.jp)
朝の連続テレビ小説「らんまん」で半年楽しませてくれた神木隆之介さんと浜辺美波さんが出演します。
あのラストの涙のシーンを演じた二人が、今度はどんな演技を見せてくれるのか。
楽しみです。


















コメント

このブログの人気の投稿

野市に”とばし”が戻ってきました

谷中から不忍の池までぶらり散歩

トラとハナ(5) 秋風と共に寂しくなってしまいました